PMOは意味ない?プロジェクト管理が企業経営に必須の理由とは

公開日:2022.02.15(火) 更新日:

PMOは意味ないってホント?

「PMOは意味ない」、「PMOは本当に必要なのか?」

PMO不要論は、ブログ記事やネットニュースなどで目にすることがあります。

PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)は、複雑なプロジェクトを一元管理するマネジメント組織です。

PMOは、企業の限られた経営資源を有効活用し、将来の目標達成のため、すべての業務を正しく進むように管理・支援するものです。

PMOは、企業プロジェクトを成功させるために存在します。組織はプロジェクトやプログラムを通じて社会的価値を提供するため、事業を成功させたい企業にとってPMOはとても重要です。

ここでは、「PMOは意味ない」という主張の間違いを指摘し、PMOがもたらす影響と成果を具体的に解説します。

PMOは意味ない?

PMOは意味ない??

PMOは、ビジネスを管理し事業を加速させたい企業や組織に大きな利益をもたらします。

PMOがその役割を果たすためには、PMOがもたらす影響と成果を正しく認識することが重要です。「PMOは意味ない」などの間違った認識を持つと、企業や組織の経営が非効率になったり、経営が破綻することもあります。

「PMOは意味ない」のよくある主張は、次の通りです。

  • 【PMOは意味ない論(1)】未来の問題は解決しないこと
  • 【PMOは意味ない論(2)】経営の基本ですべて解決できること
  • 【PMOは意味ない論(3)】プロジェクトは誰がやってもうまくいくこと
  • 【PMOは意味ない論(4)】過去の事例で全ての問題は解決する
  • 【PMOは意味ない論(5)】お金と人材さえあればプロジェクトは成功すること
  • 【PMOは意味ない論(6)】ルーチンワークの延長線上がプロジェクトである
  • 【PMOは意味ない論(7)】PMOを導入すると組織が複雑化するので意味ない
  • 【PMOは意味ない論(8)】問題が起こったらまとめて対処すればよい
  • 【PMOは意味ない論(9)】PMOがいると余計なタスクが増え仕事がきつい

PMOは意味ない / 未来の問題は解決しない

PMOは意味ない / 未来の問題は解決しない

  • 【PMOは意味ない論(1)】「未来は不安定で不確実だ。PMOを活用しても未来の問題や仕事の課題は解決しない。」

不確実な未来目標の達成にPMOが必要

いま、多くの企業が「プロジェクト」を管理できる人材を求めています。

仕事や事業のデジタル化(DX)、新規事業の開発、既存事業の推進、業務プロセスの改善など、仕事の役割や事業環境の急速な変化に対応する能力が求められているからです。

プロジェクトは、将来の目標を設定し、その目標を達成するための全ての活動を指します。

未来のことは誰にもわかりません。未来の目標を達成するための活動には、常に不確実性が伴います。

未来の目標達成のための共通した成功記事やマニュアルは存在しません。

ではどうすればいいのかと言えば、その答えが「プロジェクトマネジメント」ということなのです。

企業の経営資源(人・物・金・情報など)には限界があります。特に複数のプロジェクトを実行している企業にとって、限られた経営資源をどのプロジェクトに分配するかは、難しい判断を伴うことです。

そこで重要になるのが、複数のプロジェクトを管理・支援する「プロジェクト・マネジメント・オフィス(PMO)」です。

PMOによって、企業が展開している複数のプロジェクトを合理的かつ理論的に管理し、実行することができます。

PMOの活用は、企業の限られた経営資源を有効に活用し、不確実な未来目標を達成するために不可欠な経営手法です。「PMOは意味ない」と主張する企業は、マネジメント管理ができない組織です。

PMOは意味ない / 経営の基本ですべて解決できる

PMOは意味ない / 経営の基本ですべて解決できる

  • 【PMOは意味ない論(2)】「経営やプロジェクトの基本的な進め方がわかればよい。わざわざPMOを導入するメリットはない。」

複数のプロジェクト成功にはPMOが必須

PMOの役割や知識体系は、年々複雑化し、高度化しています。

システム開発においては、大きく2つのアプローチ方法があります。それが、ウォーターフォール(予測型)とアジャイル(適応型)です。

ウォーターフォール型は、プロジェクトの各段階を小さく分け、はじめから順番に実行していくマネジメント手法のことです。

一方のアジャイル型は、短いサイクルで試行錯誤を繰り返しながら進めていくマネジメント手法のことです。

日本では一般的に「ウォーターフォール型」が用いられてきました。「ウォーターフォール型」は、日本人にとってはなじみの深い手法です。

しかし、プロジェクトマネジメントには、ウォーターフォール型やアジャイル型のほかにも様々な役割や手法があります。

組織内で複数のプロジェクトを同時に進行している場合は、全体を管理し横断的にサポートするPMOが必要なのです。「PMO導入は後回しでよい」と主張する企業には、マネジメントの最新知識の取得をオススメします。

PMOは意味ない / プロジェクトは誰がやってもうまくいく

PMOは意味ない / プロジェクトは誰がやってもうまくいく

  • 【PMOは意味ない論(3)】「仕事の課題や現場の問題は、社内フレームワークにはめれば誰でも解決できることだ。過去の成功事例や関連記事も多数ある。どの業界のケースでも、社員にその役割を任せておけばよい。」

プロジェクト成功にはPMOとヒューマンスキルの両方が不可欠

PMOで複数のプロジェクトを遂行し、成功させるためには、2つの要素が必要です。

1つは、プロジェクトを横断的にサポートするPMOです。PMOがなければそれぞれのプロジェクトを効率的・組織的な実行が難しくなり、成功の確度が低くなります。

そしてもう1つ重要なのが、ヒューマンスキル(人的能力)です。いくら知識や技術が優れていても、それを活用できる人材がいなければプロジェクトは成功しません。

プロジェクトマネジメントは誰に任せてもいいことはありません。

PMOとヒューマンスキルが両輪となることで、複数のプロジェクトが成功するのです。社内でそのような人材や組織がなければ、プロジェクト失敗のリスクが高まります。

過去の事例で全ての問題は解決する

過去の事例で全ての問題は解決する

  • 【PMOは意味ない論(4)】「PMOは意味ない。過去の関連記事、キャリアスキル、仕事の進捗管理表や各業種の成功例を参考にすれば、未来の問題も解決する。」

新しいプロジェクトに過去の事例や記事は参考にならない

PMOのプロジェクトは、決められた期限と、固有の目標を成し遂げるための活動です。

決められた期限とは、そのプロジェクトを完遂させるために定められた未来の日時です。そして固有の目標とは、過去に例のない要素を含む、将来の目標です。

たとえば、「何月何日までに社内システム開発しなければならない」という新しいプロジェクトがあったとします。

過去に全く同じシステム構築の経験があれば、それを使い回せばいいでしょう。しかしそのようなことはまれで、新しい問題解決の目標があるからこそ、新しいシステム開発が必要なはずです。

顧客から、「○月○日までに広告リサーチプログラムを開発して欲しい」と依頼された場合も同じです。

決められた期限と固有の目標のある新しいプロジェクトには、過去の事例が参考にならないこともよくあります。「PMOは意味ない」という企業は、未来目標のない企業です。

お金と人材さえあればプロジェクトは成功する

お金と人材さえあればプロジェクトは成功する

  • 【PMOは意味ない論(5)】「PMOは意味ない。お金と人材さえあれば、プロジェクトは自然に成功する。IT業界やエンジニアなど、各業界や職種の問題も解決できることを我々は知っている」

限られた経営資源でプロジェクトを成功させるためにPMOが必須

企業の経営資源(人・物・金・仕事・情報など)には限界があります。同じように、各プロジェクトにも、品質、コスト、納期、技術、仕事、資本、人材などの成約がつきものです。

自社の問題を解決したり、顧客から依頼された製品・サービスを開発するには、限られた資金や時間の中でプロジェクトを遂行し、PMOを成功させなければなりません。

未来のことは誰にも分かりません。目標達成には不確実性やリスク要素もあります。

プロジェクトごとに納期や資金、関わる人材も変わります。転職してきたスタッフや人材にわかりやすいマニュアルに沿って仕事をしてもらうこともあります。

複雑なプロジェクトを同時に複数実行してプロジェクトを成功させるための、決められたマニュアルは存在しません。

PMOは、企業・組織において、複数のプロジェクトを効率化する重要な役割を担っています。未来の不確実性を乗り越えて目標を達成するためには、プロジェクト活動を管理・支援するPMOが必要なのです。「PMOは意味ない」と主張する人はこの重要な視点を見逃しています。

ルーチンワークの延長線上がプロジェクトである

ルーチンワークの延長線上がプロジェクトである

  • 【PMOは意味ない論(6)】「PMOは意味ない。会社のルーチンワークの延長線上にプロジェクトがある。」

ルーチンワークとプロジェクトは全く別の仕事概念

企業の事業には、大きく分けて2つの活動があります。

1つはプロジェクトで、もう1つがルーチンワークです。

プロジェクトは、企業の限られた資源の中で、将来の目標を達成するための計画と手法です。

そしてルーチンワークは、継続的な定常業務のことです。ルーチンワークは、定められたマニュアルや標準作業手順書に沿って、適切、正確、継続的、安定的に実行する業務です。

プロジェクトとルーチンワークの両方が円滑に運営されていくことで、企業は発展していきます。

成功したプロジェクトは、一過性で終わるものもあれば、システム構築後にルーチンワーク化して安定的に運用されるものもあります。プロジェクトとルーチンワークは、その性質が異なるのです。

プロジェクトは、将来の目標を成し遂げるための業務です。

ルーチンワークは、成し遂げられたプロジェクトを安定的に運用するための定常業務です。

ルーチンワークの延長線上にプロジェクトはありません。「PMOは意味ない」と主張する人はこの重要なポイントを見逃しているのです。

PMOを導入すると組織が複雑化するので意味ない

PMOを導入すると組織が複雑化するので意味ない

  • 【PMOは意味ない論(7)】「PMOは意味ない。プロジェクトは、それを担当する部署がすべて管理・実行すればよい。わざわざPMOを導入して仕事や組織を複雑にすることはない。」

複雑なプロジェクトをまとめて管理・運営するのがPMOの役割

PMOは、限りある企業の経営資源(人・物・金・情報など)を有効に活用し、将来の目標を達成させる手法のことです。

社内で複数のプロジェクトを実行しているのであれば、各プロジェクトを横断的にサポートするPMOが重要な役割を担います。

各プロジェクトを期限内・予算内で完了させるための優秀な人材(プロジェクトマネージャー)も必要です。

優れたPMOマネージャーは、プロジェクトを予定通りに進めるために各タスクを計画・実行したり、コスト配分を調整したりします。PMOを遂行するチームメンバー間の調整や、会議・報告会などのコミュニケーション能力も必要です。将来の目標を達成するために、意見の異なるスタッフをマネジメントすることも重要です。

これらの全ての要素を含んでいるのが、プロジェクトマネジメントです。

各部署がそれぞれのプロジェクトを独自で管理・実行すれば、限りある企業の経営資源が分散されてしまいます。

PMOを導入すると組織や業務が複雑化するわけではありません。複雑な組織や業務を管理・遂行するのがPMOの役割です。PMOは、最適かつ適切な方法でプロジェクトを管理するために必須の組織です。

「PMOは意味ない」という主張は、むしろ組織を複雑化しています。

問題が起こったらまとめて対処すればよい

問題が起こったらまとめて対処すればよい

  • 【PMOは意味ない論(8)】「PMOは意味ない。不安定な時代で将来のことなど誰にもわからない。だから、問題が起こったときにその都度対処すればよい。問題が起こる前になぜ準備しなければならないのか?」

プロジェクトの言語化・視覚化で課題と仕事管理が可能になる

限られた時間や経営資源の中でプロジェクトを完遂するには、プロジェクトの可視化が重要です。

プロジェクトマネジメントには、「可視化できなければ管理できない」という重要な考え方があります。

プロジェクト推進に必要な知識とスキルは言語化し、可視化しなければなりません。

言語化・可視化することで測定が可能になり、プロジェクトを正しく進めることができるようになります。

例えば、スケジュールの工程表化は、見えない時間を可視化し、計測可能にする技術です。

プロジェクトマネジメントでよく用いられる「ガントチャート」も、プロジェクトの言語化・可視化技術のひとつです。

また、見えないリスクを言語化・可視化することで、計画を立てて予実管理したり、リスク分析をして先回りしてトラブルを未然に防ぐこともできます。

プロジェクトは不確実な将来の目標を扱うので、目標設定や計画を言語化・可視化がとても重要です。

不安定な時代で不確実な将来だからこそ、プロジェクトマネジメントが注目されているのです。「PMOは意味ない」と主張する企業の経営は問題を山積させ、組織を不安定にするのです。

PMOがいると余計なタスクが増え仕事がきつい

PMOがいると余計なタスクが増え仕事がきつい

  • 【PMOは意味ない論(9)】「PMOがいると無駄な仕事が増えて仕事がきつい。案件の進捗や課題の報告などをPMO向けにも実施しなければならなくなる。また、PMOが必要だと考えたタスクに対応しなければならない時もある。しかし、結局必要なタスクを検知し対応するのは管理側ではなく現場側になる。PMOから指示されるタスクは、プロジェクトの達成と関係が無いことがほとんどになる。」

PMOとの間で発生するタスクはプロジェクトを成功させるために必須

PMOへの情報共有や、逆にPMOから仕事を振られることは確かに発生します。

しかし、これらはプロジェクトの目的を達成する上で必要な意義のあるタスクになります。

PMOと連携し仕事をしていくことは多くのメリットがありますが、たとえば以下のようなものがあります。

複数のチームにまたがる課題の検知、解決ができる

複数部署、チームにまたがるプロジェクトである場合、チーム間の品質改善は必要なタスクが抜け漏れてしまうといったことはよく発生します。

「そもそも必要なタスクであることに気づけなかった」などの理由で、ボールが落ちてしまい、品質の悪いものが出来上がってしまうこともしばしば発生します。

PMOはチーム間の仕事内容を第三の視点で見ることができるため、必要なタスクの検知し漏れなく対策できるようになります。

期限に間に合わせるため、費用を抑えるためのリソースの確保が用意になる

プロジェクトには期限があり、その期限に間に合わなかった場合、プロジェクトが成功したとは言えません。

期限に間に合わないことで、「同時並行で進めていた他の仕事が無駄になってしまい余計に費用がかかってしまう」などのことが発生してしまい、企業に大きな損失が出てしまうこともあるからです。

PMOはたとえば以下のような対応を行うことで、期限および費用に関する目標が達成できる環境を整えます。

  • 遅延しそうなタスクを把握し、それに合わせて後続のリスケを行う
  • 今後必要となる人材を明確にし、外部や他チームから調達する
  • 予定していたタスクの達成が難しくなれば、プロジェクトオーナーなどとスコープを見直し余計なコスト増加を抑える

チームを横断する判断がスムーズになる

プロジェクトは大規模なものである場合は特に複数チームにまたがる判断が必要になることがよく発生します。しかし、そのような判断をチーム間で話し合いで解決することは難しい場合が多いです。

例えば、システム開発のプロジェクトで、それぞれのチームで別のモジュールを開発しており、モジュール間の結合テストが必要になったとします。

その場合、チーム間でそのテストケースの作成やテストの実施が必要になりますが、仕事を分担する際に、どのタスクをどちらがやるべきかという判断で揉めるといったことは頻繁に起こります。

その場合、PMOが入ることで中立的な目線で最適な決定ができるようになります。

まとめ

まとめ

「PMOは意味ない」とする次の主張とその反論を解説しました。

  • 【PMOは意味ない論(1)】未来の問題は解決しないこと
  • 【PMOは意味ない論(2)】経営の基本ですべて解決できること
  • 【PMOは意味ない論(3)】プロジェクトは誰がやってもうまくいくこと
  • 【PMOは意味ない論(4)】過去の事例で全ての問題は解決する
  • 【PMOは意味ない論(5)】お金と人材さえあればプロジェクトは成功すること
  • 【PMOは意味ない論(6)】ルーチンワークの延長線上がプロジェクトである
  • 【PMOは意味ない論(7)】PMOを導入すると組織が複雑化するので意味ない
  • 【PMOは意味ない論(8)】問題が起こったらまとめて対処すればよい
  • 【PMOは意味ない論(9)】PMOがいると余計なタスクが増え仕事がきつい

PMOが意味ないと思っている人でも、PMO導入の効果を理解して頂けたでしょうか。

不確実性が高まる中、プロジェクトも柔軟に対応させていく必要性が高まってます。

未来の目標に向かうすべての企業にとって、PMOの正しい認識が重要です。PMO運営は企業や組織に未来への明確なビジョンをもたらし、事業に正当かつ十分な価値をもたらすのです。