最善の社内体制とは?ERPシステム導入プロジェクトの進め方について

公開日:2023.03.09(木) 更新日:

ERP導入で進める上で効果的な社内体制を紹介

最善の社内体制とは?ERPシステム導入プロジェクトの進め方について

ERPシステムはSAP、Oracle、Microsoftの製品が有名ですが、非常に需要が高いため他にも数多くのERPパッケージベンダーが存在します。

特定の業界、業務、企業規模などに特化したERP製品もリリースされており、それぞれに特徴があります。

必ずしも大手のERPパッケージが適切であるとは限りません。また、ERPシステム導入の流れも企業ごとに異なります。

要件、スケジュール、費用などの事情は各社によって異なります。

それぞれの企業に合わせて適切な導入ステップを検討しプロジェクトを推進していくことが求められます。

そのため、プロジェクト成功には適切な社内体制の構築が特に重要になります。

ERP導入の手順について

ERP導入の手順について
ERPパッケージを導入手順は、一般的なシステム開発とは異なるものになります。

ERPの場合、機能開発は基本的には行わず、企業の目的や業務要件に合わせて製品を選定しシステムをカスタマイズしていく形で導入することになります。

ERPパッケージには業務のベストプラクティスをもとに実装された機能が備わっています。

その機能をベースとして業務プロセスを構築し、その上で企業の個別の要件に合わせてカスタマイズしたり、部分的に追加開発を行う形で導入を進めます。

一般的なステップについて

導入の手順は企業によって異なります。

どんな企業でもその企業特有の要件を持っているため、それぞれの状況に合わせて最適な導入手順を検討する必要があります。

もちろん一般的なERP導入の手順は存在するので、それらも参考にしつつ進め方を決定します。基本的には以下で説明する順番で導入を進めます。

①計画、要件定義

ERP導入手順の中で最も重要なステップになります。ERPシステムの導入には膨大なコストがかかります。

ソフトウェア自体の費用に加え、人件費、追加開発費、設備費などのコストもかかります。

プロジェクト期間が少なくとも数か月以上の長期になることも高い費用が発生する理由の一つです。

企業にとってはリスクの高いプロジェクトになるため、失敗しないよう入念な実装計画を作ることが何より大事になります。

プロジェクトの目的や要件を明確にした上で、適切なルールの整備、ERP製品や開発を委託するベンダの選定、開発スコープの決定などを行います。

このフェーズを適切に実行することで、後続で致命的な課題が発生するリスクを下げることができます。

②設計

明確にした要件をもとに新しく構築するERPシステムの詳細をデザインしていくステップです。

ここでは既存のプロセスをそのまま新システムでも実現しようとするのではなく、より効率的なものに改善していくことがポイントになります。

既存の業務手順に無駄がないか見直すことや、実装する機能をより業務に適したものに改良できないかなど検討していくことが重要です。

業務担当者をうまく巻き込んで進めていくことが推奨されます。

そうすることで現行のシステムで実現できていることを担保すると同時に、新システムに移行することに対する現場の理解も得やすくなります。

ERPを導入することで実現できる業務プロセスと実業務にギャップがある場合は、開発委託先も含め相談しながら解決策を模索します。

③開発

設計で決めた内容をもとにシステムを作りこんでいくステップです。

ERPパッケージを導入する場合、まずは設定で機能をカスタマイズしながら業務を作りこんでいき、その上でERPシステムではサポートされていないその企業特有の要件がある場合は、アドオン開発で対応することもあります。

また、近年ではどの企業でもDXが積極的に推進されているため、他システムやクラウドサービスとの連携するためのインターフェースを開発することも多くなっています。

さらに、この開発のステップでは並行してユーザー向けの説明書の作成や、システム移行のためのデータやスクリプトの準備を行っていくことも多いです。

特に移行関連のタスクは時間がかかる場合が多く注意が必要になります。

④テスト

システム上で実装した仕組みや機能が想定通りの動作をするか確認するステップです。

テストは開発と同時に行っていくことも多くなります。

普通のシステム開発と同じく、まずシステム観点でのテストを実施してから業務観点のテストを行うという手順になるのが一般的です。

計画段階でテストの進め方に関しても検討され十分な準備が行われることが重要になります。

たとえば、大量のデータを扱う場合はストレステストが重要になるなど、企業によって重視すべきテストは異なります。

企業の状況に合わせてテストを定義し実行していくことが求められます。

⑤リリース

本番環境にシステムを適用し稼働させるためのステップです。リリース中に想定外の問題が発生することもよくあるため、入念な準備が必要になります。

たとえば、以下のような問題の発生が考えられます。

  • 手動部分のリリースでヒューマンエラーが発生してしまった
  • 移行スクリプトに不具合が見つかりデータが想定通り移行されなかった
  • データ量が想定より多く、想定時間内にデータ移行が終わらなかった

リリース時に障害が発生した場合の対応方法や手順に関して事前に決定しておくことが求められます。

本番リリース時には開発やインフラ担当者を待機させ、障害発生時に迅速な対応や調査が行える体制を整えることが必要な場合もあります。

⑥運用保守

ERPシステムを本番稼働させてた後で、追加要件の対応や稼働中に発覚した不具合の修正を行うステップです。

より効率的に業務が行えるようシステムを改良していく必要があります。ユーザーからのフィードバックを定期的に受けられるような体制を整えることが推奨されます。

ERPシステムのデメリットとその解決策

ERPシステムのデメリットとその解決策
ERPシステム導入のデメリットはあるのでしょうか?

よく挙げられるデメリットとしては、システムそのもののコストが高いということがあります。

しかしそれ以上のデメリットとして挙げられることは、その企業だけに存在するような特殊な要件への対応が難しいということが挙げられます。

ERPシステムにはどの企業でも行う必要がある一般的な業務をサポートする機能が実装されています。

ただし、特殊なビジネスを行っている企業や、他社とは異なる独特なアプローチで業務を進めていく企業である場合、業務をサポートするための機能を作りこんでいくことが困難になることもあります。

アドオン開発で特殊な機能を追加していくことは可能ですが、あくまで基本となる業務機能を補助する形で実装されることになります。

逆に業務があまりにも特殊でERPシステムに備わっている基本機能がほとんど使えない場合は、ERPパッケージではなくフルスクラッチのシステムを構築するべきと言えます。

そのため、ERPシステムを導入させる上では、計画の段階で要件を明確にすることと、その実現がERPシステムで可能かどうか見極めることが特に重要になります。

選定する予定のERP製品に関して入念にチェックし、自社のビジネス要件を満たしていくことができるものか確認することが重要になります。

その上でどうしてもERPで作りこむことが難しい要件がある場合は、対策を検討する必要があります。

たとえば、特殊な要件がある業務プロセスに関してはフルスクラッチのシステムを開発し、それ以外の一般的な業務に関してはERPパッケージで作りこんでいくという方法が考えられます。

また、特定の業界に特化した特殊な要件もサポートできるERP製品もあるため、別の製品を調査してみるという選択肢もあります。

このような判断を行っていけるプロジェクトにするためにも、適切な社内体制を構築した上でプロジェクトを進めていくことが重要です。

導入を進める上での社内体制構築のポイント

導入を進める上での社内体制構築のポイント
ERPシステムの導入は、以下のポイントを参考に、適切な体制を作っていくことが求められます。

企業の目的や経営、業務上のメリットを意識する

ERPシステム導入のメリットは数多くあり、企業によってその目的は異なります。ERP導入の方針が決定された後は、

  • 自社のビジネス上の目的は何か?
  • 経営戦略としてどんな施策を講じていきたいか?
  • 業務上どんな課題があり、どう解決していきたいか?

など、目的をより具体化し各プロセスを進めて行く必要があります。

目的が明確になっていないと作りこんでいく業務や機能が曖昧になり、期待通りの成果が得られない結果となってしまいます。

そのため目的を明確化できる体制を作ることが重要になります。

たとえば、顧客ごとの趣味嗜好や市場全体のニーズを可視化し、経営層や管理職がリアルタイムで新たな経営施策を講じていけるような仕組みを作っていくことが目的だとします。

その場合、一般的にはカスタマーエクスペリエンスやCRMソリューションの仕組みを重視しERPシステムを構築していくことになります。

現代のERPパッケージには、ECサイトからデータを吸い上げ分析することによる市場ニーズの調査、経営層向けのデータの見える化、AIチャットボットを利用した顧客とのコミュニケーション効率化、などの仕組みが実装されています。

明確化した要件に合わせて仕組みを選択し自社に合わせて作り変えていくことで目的を達成していくことになります。

この例以外にも、

  • 特定の業務の一部または全てを自動化することでコスト削減したい
  • サービス品質改善する仕組みを作りたい
  • 顧客が希望する時間と場所に商品を届けたい

などERPシステムへの要件には様々なものが考えられます。

要件に合わせて社内関係者をうまく巻き込んでいくことが重要です。

システム部門だけでは理想的な仕組みは実現できるものではないため、経営陣、業務担当者などの意見が取り入れられるプロジェクト体制の構築が必要です。

失敗リスクを下げるための準備や改善を行っていける形をとる

プロジェクトはどんなに入念にリスクを調査し計画しても想定外の問題は発生します。

そのためプロジェクトを絶対に成功させる方法は残念ながら存在しませんが、失敗のリスクを下げることは可能です。

特にERPプロジェクトは大規模で難しいものになることが多いため、想定外の事態が発生した際に適切に対応していくことができる体制づくりが重要です。

基本的にはプロジェクトを開始する前にPMOなど管理業務を担う組織を立ち上げ、プロジェクトを推進していく上での体制、役割分担、ルールなどを明確化しておくことが必要になります。

ここに不備がある場合、プロジェクトの成功率は大きく下がってしまいます。

たとえば、課題が発生した際にチームごとの考え方で対応してしまい全体の動きがバラバラで生産性の低いプロジェクトになってしまう、といったことが考えられます。

結果、スケジュール遅延や想定外のコストが発生してしまう可能性が高くなります。

ではERP導入のプロジェクトを成功させるための事前準備や施策としては具体的には何があるのでしょうか?その一例として、スコープを明確化しておくことが挙げられます。

ERPパッケージでサポートできる業務は非常に広範囲であるため、適切なスコープ設定が重要です。人事管理、会計業務、サプライチェーンなどERPシステムがカバーする領域は様々です。

仮に社内の業務全てをシステム化する方針になったとしても、全てを同時に進めていくことは現実的ではありません。

そのため、プロジェクトではそのためのソリューションを用意していくことが必要になります。

例えば、スモールスタートで導入することでリスクを下げる場合や、あらかじめ業務に優先順位を付けておき問題が発生した場合は優先度の高いものだけ導入できるようにするなどの方法が考えられます。

常にプロジェクト内の課題を監視し対応策を判断していける体制を整えることがポイントです。

まとめ

ERP導入プロジェクトはそのほとんどが難しいものになります。

経営層、業務担当者、システム担当者など考え方が異なる関係者の意見をまとめていくことは大変な仕事になります。

ERPパッケージは非常に多機能で導入メリットも大きいため、社内から様々な要望が挙がります。そのため適切な社内体制の構築することは特に重要になります。

適切な体制を敷くことができれば、プロジェクトを成功させる上で必須と言える方向性の決定、スコープ調整、要件の優先順位付けなどをスムーズに行っていくことが可能になります。