PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)の資格について

公開日:2021.10.26(火) 更新日:

PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)の資格について

PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)の資格について

プロジェクトを円滑に推進するために、マネジメントを下支えするPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)と呼ばれる組織があります。

社内にPMO組織を抱えるケースもありますが、コンサルティングファームやSIerがPMOを外注するケースもあり、その存在が一般的に広く認知されるようになってきました。

PMOを設けることで、『プロジェクトを可視化することで客観点に管理』、『PM(プロジェクトマネージャー)の負荷が軽減できる』というメリットがあり、日本でもPMOを採用するプロジェクトが多くなっています

今後も、さまざまなプロジェクトでPMOのニーズが高まることが予想され、転職や再就職においてもPMOの現場業務経験が有利になることも考えられます。

一方、PMOには豊富な知識と経験、高度なスキルが求められますが、具体的にどんな資格があって、どんなスキルが必要なのかについては、あまり知られていないようです。

そこで、今回はPMOに関連するおすすめ資格について紹介し、内容や取得方法について詳しく解説していきたいと思います。

特にIT企業ではPMOスペシャリスト育成のために、資格取得を奨励しているところが多くありますので、うまく会社の制度を利用してご自身のキャリアップにつなげていただければ幸いです。

PMO資格は必要なのか?

PMOに資格は必要なのか?

PMOは資格が無いと仕事ができないわけではないですが、PMO業務を遂行するにあたって役立つ資格や転職・求職時に有利な資格はあります。

そもそもPMO自体が目に見えた成果を生み出す組織ではなく、プロジェクトを円滑に推進するための下支え組織であることから、外部から適切な評価がされにくいのは確かです。

こういった背景から、PMO資格を持っている方が周りと差別化が図りやすく、採用側へのアピールがしやすくなります。

例えば、プロジェクトマネジメントは日本だけではなく世界中で行われているわけなので、PMPのように共通言語化されている資格を持っていると、どの程度汎用的な知識を有しているのかを想像しやすい効果があります。

また、採用側は資格を取得するまでのプロセスの方を重要視する傾向があり、PMO資格試験に必要な情報をどう収集したのか?どう体系立てて学習していったのか?

また、それをどう実際のプロジェクトに活かしたのかということを質問されることが多いです。

また、PMO資格があったからといってプロジェクトのPMOとして有能とは限りませんので、常に実践経験を積んでいくなかでスキルを磨いていく必要があります。

PMOに役立つ資格について

PMOに役立つ資格について

PMOには当然PM(プロジェクトマネージャー)としての知識体系も必要であり、ここでは広くPMOに役立つ資格を紹介することにします。

全て必要な資格というわけではありませんが、転職・求職または昇進時のアピールにもなります

たくさん種類があるので、自分の能力に見合ったレベルからチャレンジすることをおすすめします。

(1)PMP

おそらくPMの分野では世界で最も有名な資格ではないでしょうか。

プロジェクトマネジメント体系を広く抑えておくためにはおすすめの資格です。

試験名 PMP
運営団体 米国PMI本部
受験資格 35時間の公式な研修の受講。または実務経験
受験料 PMI会員:405USD / PMI非会員:555USD
試験時間 240分
試験環境 WEB完結型。選択問題が中心
合格条件 200問中122問正答で合格
難易度 ★★★☆☆

試験内容としては、PMIが取りまとめる『PMBOK』と呼ばれるマネジメント体系から出題されます。実際にはプロジェクトの立ち上げから計画・実行・監視コントロール・終結の流れの上で重要なポイントが網羅されたものになっています。

事前35時間研修とPMP受験がセットになった試験対策講座を用意する企業も多いので、比較的取得しやすい資格とも言えます。

特徴的なのが、無事に認定取得した以降も3年ごとに更新条件を満たしているかの審査があります。

これはPMIに認可されたカリキュラム(講座受講、公演、後進育成)を60PDU(1PDUが1時間であることが多い)積みあげ、3年ごとにPMIへ報告する必要があります。

更新要件を満たさない場合、PMP資格が剥奪される厳格さなので、国際的にも信頼のある資格と言えます。

(2)CAPM

PMPと同じく、PMIが監督する資格試験になります。主に大学生・大学院生を対象とした資格です。学術的な意味合いが強いのか、本資格を持っている人は少数となっています。

試験名 CAPM
運営団体 米国PMI本部
受験資格 23時間の公式な研修の受講。または実務経験
受験料 PMI会員:225USD / PMI非会員:300USD
試験時間 180分
試験環境 WEB完結型。
合格条件 約60%
難易度 ★★☆☆☆

試験内容としては、PMBOKからの出題とはなりますが、プロセスや専門用語を把握しているのかが焦点となります。

PMPとは異なり、本資格を持っていることでPMOの能力を証明することになるわけでもなく、企業の研修プランや推奨試験に含まれることはありません。

(3)プロジェクトマネージャー資格(PM)

基本情報処理でお馴染みのIPAが監督するプロジェクトマネージャー試験になります。

これもPMPと並び、知名度が高い資格になります。

試験名 プロジェクトマネージャー試験(PM)
運営団体 IPA(情報処理推進)
受験資格 なし
受験料 5,700円
試験時間 午前Ⅰ(50分)/午前Ⅱ(40分) – 午後Ⅰ(90分)/午後Ⅱ(120分)
試験環境 試験会場にて実施。選択式・記述式・論述式
合格条件 正答率60%以上
難易度 ★★★★☆

試験範囲は、システム開発プロジェクトに特化しています。システム開発プロジェクトの責任者としての役割を主導的に行えるか、またメンバー指導するために必要なスキルがあるかを問う問題が多く出題されます。

プロジェクトマネージャー試験は、情報処理技術者試験のなかでも最も難易度が高いスキルレベル4に相当し、合格率が15%程度しかありません。

幅広いITリテラシやプロジェクトの実務を経験しないと明らかに対応できない問題があるので、基本情報技術者試験、応用情報技術者試験といった下位の資格を取得してから受けるのが良いかと思います。

経済産業省認定ということと、企業によっては昇進条件になるところもあり、20代後半から30代前半の内に勉強して取得しておく人も多いようです。

(4)プロジェクトマネジメント・アソシエイト認定

こちらは日本PMO協会が監督する資格の1つです。

PMOとは何ぞやという初心者を対象とした試験がアソシエイト認定になります。

試験名 プロジェクトマネジメント・アソシエイト認定
運営団体 日本PMO協会
受験資格 指定のNPMO認定教材を修了
受験料 一般:14,300円 / 会員:9,900円
試験時間 120分
試験環境 WEB完結型。選択式
合格条件 正答率75%以上
難易度 ★★☆☆☆

試験範囲としては、事前に受講する講習教材(eラーニング)から出題され、現場業務における基本的なプロジェクトマネジメントの知識とスキルを問う試験になります。

プロジェクト宣言書、RACIチャート、WBS、リスク管理簿など、種類豊富な専門用語を学べるため、PMOだけではなくプロジェクトメンバ育成としても最適な内容です。

(5)PMOスペシャリスト認定

(5)PMOスペシャリスト認定

日本PMO協会が監督する資格になりますが、こちらの方がPMOの資格として実践的です。

試験名 PMOスペシャリスト認定
運営団体 日本PMO協会
受験資格 指定のNPMO認定教材を修了 / アソシエイト認定取得者
受験料 一般:14,300円 / 会員:9,900円
試験時間 90分
試験環境 WEB完結型。選択式
合格条件 正答率80%以上
難易度 ★★★☆☆

試験範囲としては、アソシエイト同様に講習教材(eラーニング)から出題されますが、より専門性のある実務重視の試験になります。

なかなか実践的な内容になっており、課題・リスクの抽出観点や品質・コストなどの目標・指標の立て方など、基本的なスキルを前提に、それをどう使うのかを問う問題が多いです。

こちらも合格率が20%程度とかなり難易度が高く、IPAのプロジェクトマネージャーと併せて資格保有しているだけでアピールになります。

試験で問われる内容が比較的近しいこともあり、IPAプロジェクトマネージャーの試験を受けて、次にPMOスペシャリストの試験を受ける方も多いです。(ただ、両方の資格を保有している人に会ったことはありません)

また、PMPと同様に更新が必要となるため、継続的な学習と実践経験が必要となります。

(6)PMC資格試験

ここからは日本プロジェクトマネジメント協会が監督する試験4つ(PMC、PMSプログラム、PMS、PMR)を紹介します。

これまで紹介した資格と比較すると、知名度という面で見劣りしますが、プロジェクトをITシステム開発以外に広げた数少ない国内資格なので、今後注目される可能性があります。

試験名 PMC資格試験
運営団体 日本プロジェクトマネジメント協会
受験資格 PMS資格登録者
受験料 16,700円(資格登録料別)
試験時間 75分
試験環境 試験会場にて実施。選択式・穴埋め
合格条件 正答率70%以上
難易度 ★☆☆☆☆

試験内容はPMC講習会やP2Mとよばれるガイドラインから出題されます。

難易度も低く、学生や社会人1年目でも十分資格取得できる内容になっています。

(7)PMSプログラム試験

PMC資格取得者が受験できる資格になります。

プログラムという言葉には、『複数のプロジェクトをマネジメントする』という意味があり、プロジェクトが輻輳するのが当たり前の現在ではとても重要な概念です。

試験名 PMSプログラム試験
運営団体 日本プロジェクトマネジメント協会
受験資格 PMC資格登録者または特定資格保有者
受験料 22,500円(資格登録料別)
試験時間 75分
試験環境 試験会場にて実施。選択式・穴埋め
合格条件 正答率70%以上
難易度 ★★★☆☆

試験内容としては、プログラムマネジメントに偏った内容になります。

また、受験資格にある特定資格保有者には、以下のいずれかを取得していれば良いです。

情報処理技術者(プロジェクトマネージャ)・技術士(総合技術監理部門)・ITC(ITコーディネータ)・CM(コンストラクション・マネジャー)・中小企業診断士・PMP

(8)PMS資格試験

こちらもPMSプログラム試験と同様の資格になります。PMS資格は最難関として待ち受けるPMR資格試験の受験条件にもなります。

試験名 PMS資格試験
運営団体 日本プロジェクトマネジメント協会
受験資格 なし
受験料 39,200円(資格登録料別)
試験時間 150分
試験環境 会場にて実施。選択式・穴埋め問題
合格条件 正答率70%以上
難易度 ★★★☆☆

試験範囲としては、プログラムマネジメントの他に事業経営基盤・知識基盤・人材能力基盤といった組織基盤に関する問題が出題されます。

(9)PMR資格試験

最難関の資格になります。筆記だけではなく、面談やグループ討論などで、PMとしての思考プロセスや知識体系を問う内容になります。

試験名 PMR資格試験
運営団体 日本プロジェクトマネジメント協会
受験資格 PMS資格登録者。実務経験3年以上
受験料 1次試験:55000円 / 2次試験:165,000円
試験時間 1次試験:3時間 / 2次試験:7時間30分
試験環境 試験会場にて実施。1次試験は面談・記述試験。2次試験はグループ討論
合格条件 正答率70%以上
難易度 ★★★★★

試験範囲としては全てを含みます。合格者の平均年齢が40代後半ということもあり、経営層やそれに近い方が同じグループ討論や面談を受けるので、付け焼き刃の知識は役に立たないかと思います。

資格取得のためのおすすめ勉強法

PMOに関連した資格を取得するためにはの学習方法としては、主に「実務経験を活用する」「書籍で学習する」「研修・e-Learningを受講する」といった方法が考えられます。

以下で、それぞれの詳細について解説します。

実務経験を積む

資格の取得のために最も効率的な手法は実務経験を積むことです。実際に自身で経験したことは、身につきやすいためです。

特に、IPAのプロジェクトマネジメント試験などでは、実務経験に応じて論述を行うような試験も出題されますので、実務経験から学ぶことは試験対策面でも重要といえます。

ただし、実務経験では網羅的な知識が得られないデメリットもあります。実務経験で得ることが難しい領域については、以下の通り書籍での学習や研修の受講などで補完する必要があります。

書籍で学習する

資格を取得するためにまず思いつく方法は書籍による学習ではないでしょうか。書籍をベースに学習することで、網羅的に知識を習得することができます。

また、試験対策として問題集や過去問題を実際に解いてみることも有効です。知識を持っていたとしても、適切にアウトプットできなければ試験に合格することはできません

書籍を選ぶ際のポイントは、「自分に合ったものを選ぶ」ことです。書籍の書き味は千差万別であり、読みやすさは各々によって異なります。

自分が読みたいと思える書籍でなければ、継続して学習することは難しいです。

一方で、実務経験がない領域に対する完全な独学は、知識の習得効率が悪くなります。その場合、次に紹介する研修・e-Learningなども活用するとよいでしょう。

研修・e-Learningを受講する

自身に知見が全くない領域については、研修やe-Learningなど講義形式で他者に教えてもらえる機会を活用することをおすすめします。

ほかの人に教えてもらうことで、その分野のポイントを素早く理解できます。研修やe-Learningを活用することで、独学よりも学習効率を向上させることができるでしょう

近年では、場所や時間を問わず受講が可能であるe-Learningやオンライン学習サービスなども充実していますので、効率的に受講が可能です。

一方で、一般的に研修やe-Learningを受講するためには費用が掛かりますので、自身が苦手としている分野や知見が足りない分野などに絞ったうえで受講するとよいでしょう。

資格以外にも必要なスキルや実務経験

資格以外にも必要なスキルや実務経験
前述している資格試験を活用し、プロジェクト管理について理解を深めていくことは有効です。しかし、プロジェクト推進で必要になってくるスキルの中には本などでは学びにくいものもあります。

コミュニケーション能力

コミュニケーション能力は、机上では理論を学ぶことはできても実践的にはならないスキルの代表例と言えますが、PMOには必須の能力と言えます。

プロジェクト推進では情報を収集していくことが重要になります。そうなると必然的に多くのプロジェクトメンバーとやり取りが発生します。

そのため、PMOには高いコミュニケーション能力が求められることになります。

コミュニケーションを勉強するための資格、講座、本、などはありますが、それよりもより多くの経験をしておくことがポイントです。

普段の生活から他人とのコミュニケーションに意識的に慣れておくことがおすすめとなります。

ロジカルシンキング能力

プロジェクトの推進は、合理的に考えるということが特に重要になります。

プロジェクトは多くのメンバーと協力して進める必要があるため、数多くのステークホルダーから信頼を得ていくことがプロジェクトの目的を達成していく上でポイントとなってきます。

相手から信頼され協力してもらうためには、やはりタスクの考え方や進め方に関して納得してもらえる説明ができることが必須です。

その伝え方も含めロジカルに考え抜いた上で仕事をしていくことで、他人から協力を得やすくなり、プロジェクトの成功率を上げていくことができます。

語学力

より多くの人とコミュニケーションを取れるようになっていくことで、PMOとしての市場価値は高くなります。

そのため、外国語力は必須ではないプロジェクトもありますが、英語や中国語など需要が高い言語でのコミュニケーションスキルもあったほうが、PMOとして就職や転職をする際は断然有利になります。

語学力が高ければ、条件にマッチし応募できるようになる求人の数が大きく増えるので、身につけておくべきおすすめのスキルの一つです。

注意点としては、文法的に正しい言葉を発信できるということではなく、伝わる言葉が使えることが重要であるということになります。

よって、本などで勉強することよりも慣れておくことがポイントです。

実際、転職などのプロセスでも、TOEICでハイスコアを持っていることよりも、英語で仕事をした経験がある、ということの方が評価を受けやすくなります。

まとめ

まとめ
今回は、PMOに役立つ資格について解説しました。

必ずしもPMOに資格が必要というわけではありませんが、資格を取得するまでのプロセスや資格を取得するまでに学んだスキルを実践でどう活かすかが評価されるポイントです。

かなり難易度の高い資格もあるので、資格コレクターで終わるのではなく、実践でスキルを磨くことが市場価値を高めるためには重要だと思います。