PMOの転職事情とは?経験別にポイントや必要なスキル・資格を解説

公開日:2022.04.18(月) 更新日:

PMOの年収や求人内容などに関する転職事情や必要なスキルや資格を紹介

PMOへの転職方法をご存じですか?

PMOはプロジェクトの専門家として、全社のプロジェクトを成功に導く組織です。

近年、PMOは重要性と将来性から注目度が高まっています。

この記事では、未経験からPMOに転職する方法を解説します。

PMOとは

PMOとは

PMO(Project Management Office)とは組織内のプロジェクトを横断的に支援し成功に導く組織です。

企業戦略を達成するためにプロジェクトマネージャー(PM)をサポートし、プロジェクトが円滑に進むよう支援します。

PMOは専門性に合わせて以下の役割にわかれます。

役割 主な仕事内容
PMOアドミニストレータ プロジェクト内の事務作業や情報共有、PMのサポートを行う
PMOエキスパート 全社のマネジメント標準の制定、全社のマネジメント能力向上の教育を行う
PMOマネージャー 全社のプロジェクトを俯瞰的に管理し、PMOチームの分担や教育を行う

PMOはプロジェクトの成功確率を高め組織全体のプロジェクト遂行能力を向上させる重要な存在といえるでしょう。

PMOの需要は上昇中!その理由とは?

PMOの需要は上昇中!その理由とは?

現在、DX推進の流れもあり、多くの企業でIT投資が活発に行われています。

このような状況下で、多くのシステム開発プロジェクトが実行されています。

一方で、企業におけるIT人材不足は深刻な状況です。

日本においては多くのIT人材がシステム開発ベンダーに偏っていることもあり、事業会社ではシステム開発プロジェクトの推進役となる人材が足りていません。

このような状況の中で、プロジェクト推進にPMO人材を積極的に導入する流れができています。

中途採用などでPMO人材を確保するケースもありますが、プロジェクトにおいて一時的に必要なリソースは外部から調達することになります。

具体的には、ITコンサルティング企業などからPMO人材のリソース提供を受け、自社側の人員としてPMOの役割を担わせることになります。

PMOの将来性

PMOの将来性

近年のビジネス環境はデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進や顧客ニーズの多様化に伴い、ますます複雑になっています。

厚生労働省の「IT・デジタル人材の労働市場に関する研究調査事業」によると、IT・デジタル企業において人材不足が最も深刻な職種はPMです。

多くの企業で複雑化・大規模化するプロジェクトを適切に管理し、成功に導くことのできるマネジメント人材の需要はますます高まっています。

PMOはプロジェクトマネジメントの専門家であり、将来性の高い職種といえるでしょう。

IT・デジタル人材の労働市場に関する研究調査事業 | 厚生労働省

PMOへの転職は「やめとけ」は本当?

PMOへの転職は「やめとけ」は本当?

PMOへの転職を検討している方は「やめとけ」「きつい」という否定的な意見をネット上などで聞いたことがあるかもしれません。

PMOはPMをサポートしプロジェクトを支援することが役割のため、以下の理由で「やめとけ」「きつい」といわれるケースがあります。

  • ドキュメント作成や管理業務、スケジュール調整といった事務的で地味な作業が多い
  • 支援する役割である以上、表立って目立つことが少ない

しかし、これらの業務はプロジェクトを成功に導くためにはなくてはならない重要な仕事です。

例えば、緻密な資料作成は関係者間の認識の相違を防ぎ、地道な進捗管理はプロジェクトの遅延や問題点の早期発見と迅速な対応を可能にします。

大変な側面もありますが、それ以上にプロジェクトへの成功と自己成長を得られる、やりがいのある職種といえるでしょう。

平均年収相場はどれくらい?

平均年収相場はどれくらい?

それでは、PMO人材として働く場合にはどの程度の年収を得ることができるのでしょうか。

多くのPMO求人は非公開となっているため、正確な金額は不明ではありますが、正社員として勤務するPMOでは600万円から700万円程度が相場といえます。

当然ながら、自身のランクや勤務先企業の規模、雇用形態によって待遇は大きく異なります。

また、ITコンサルタント全体では、厚生労働省が実施している「賃金構造基本統計調査※」が参考となります。令和6年度の調査では、「システムコンサルタント」の平均給与は、平均年齢41.4歳で約693万(賞与含む)となっています。

ここからはPMO人材として転職を目指す方向けに、パターンごとにポイントを解説します。

令和6年賃金構造基本統計調査 | 厚生労働省

パターン① 新たにPMO人材として転職する

パターン① 新たにPMO人材として転職する

まずは、現在は別の職種ではあるものの、転職によりキャリアチェンジを行って新たにPMO人材となるパターンを紹介します。

エンジニア・SEからの転職

PMO人材となるためには、プロジェクトマネジメントスキルをはじめとしたシステム開発スキルが重要です。

特に、PM経験のあるエンジニア・SEの方であれば、PMO人材への適性は高いといえるでしょう。

一方で、PM経験なしのエンジニア・SEであっても十分にPMOへ転職するチャンスはあるといえます。

その理由は、PMOにおける仕事は多岐にわたり、特にシステム開発における標準策定などはエンジニアリングスキルも重要だからです。

エンジニア・SEからPMO人材への転職を目指す場合には、自身のスキルをアピールすることがポイントといえるでしょう。

また、ベンダー側でエンジニアとしてシステム導入に参画した経験は、PMO業務において必ず役に立ちます。

ベンダー側の考え方や内部事情などを理解しておくことで、ユーザー側でPMOを実施する際に、原因や課題の深堀に生かすことができます。

ITコンサルタントからの転職

ITコンサルタントから、PMOを専門とするPMOコンサルタントに転職するパターンもあります。

ITコンサルタントとして仕事をする中で、PMOの役割を担うケースも多くあります。

PMOの経験があるのであれば、当然ながらその経験や実績をアピールすることが大切です。

一方で、PMO以外のITコンサルタントとしてのキャリアも無駄にはなりません。

今後PMOコンサルタントとして領域を絞ったキャリアプランを立てるとはいえ、ITコンサルタントとして様々なプロジェクトに参加して得たスキルは貴重なものです。

転職市場での評価を高められるように、今後のPMO業務に生かせる自身のキャリアを整理することがポイントです。

パターン② キャリアアップを目指すケース

パターン② キャリアアップを目指すケース

逆に、PMO人材の方がキャリアアップのために転職するケースもあります。

  • PMOを専門とするコンサルファームへの転職
  • 特定業界に強いコンサルファームへの転職

上記2パターンについて、転職時に確認したいポイントを簡単に解説します。

PMOを専門とするコンサルファームへの転職

ITコンサルティング企業などでPMOを担っている方が、PMOを専門とするコンサルティングファームに転職するケースです。

これにより、年収などの待遇を向上させることができる可能性があります。

上述の通り、PMO人材の需要は高まっている状況であり、PMO人材を扱う企業も積極的に人材を確保しています。

売り手市場といえる状況ですので、現状の待遇に不満がある場合には転職を検討してみてもよいでしょう。

特定業界に強いコンサルファームへの転職

もう一つの考え方として、金融やエネルギー、医療など特定の分野に強いコンサルティングファームへの転職が考えられます。

この場合、「PMO×業界知識」というスキルの掛合わせにより、転職市場でも優位に立つことができるでしょう。

PMO業務を通じて得た経験はもちろんのこと、これまで担当してきたPMO以外の業務において、特定の業界に関する知見が深ければ、積極的にアピールしていくべきといえます。

また特定業界というわけではありませんが、SAP等のERP導入経験が豊富であればERP導入に強いPMOコンサルタントとしてキャリアアップを目指すことも考えられます。

ERPの導入は固有のスキルが必要となりますので、専門性を発揮しやすい部分です。

パターン③ スキルを活かしてキャリアチェンジを目指すケース

パターン③ スキルを活かしてキャリアチェンジを目指すケース

これまで獲得してきたPMOスキルやPMO経験を活かして、別の職種へキャリアチェンジを目指す転職パターンについて紹介します。

社内PMOとして事業会社へ

PMOスキルを活用して、事業会社内の社内PMOとして転職するケースも考えられます。

事業会社では積極的にIT人材を採用している状況であり、求人も比較的豊富なため転職しやすい傾向にあります。

現在の日本企業には、IT人材が不足している事業会社が多く存在しています。

そのため、PMOスキルを保有していれば、転職先で貴重な人材とみられる可能性が高いです。

一方で、事業会社特有のルールやプロジェクトの進め方の理解、社内人脈の構築など、乗り越えなければならない壁も多くあるでしょう。

また事業会社の多くはジョブ型雇用ではなくメンバーシップ型雇用となっていますので、当初PMO人材として採用されたものの、社内事情などによって別の役割を担うケースもあることに注意が必要です。

PMOスキルも備えたITコンサルタントとして活躍

転職先でPMOスキルを活かしつつ、ITコンサルタントとして仕事の幅を広げるケースもあります。

特に、PMO業務を通してDX推進やAIの活用など固有のスキルを獲得できた場合には、それらのスキルを活かした転職を考えてもよいでしょう。

PMOを専門にするコンサルティングファームでなければ、社内にとどまったまま自身での営業活動を通じてPMO以外の仕事を獲得していくことが可能な場合もあります。

また、社内で異動希望を出すことも考えられます。

一方で、PMOを専門にするコンサルティングファームに在籍している場合は、仕事の幅を広げるために転職を検討することになります。

この場合、PMO以外の自身のスキルと経験をどこまでアピールできるかがポイントです。

PMOコンサルタントとして独立

最後に、転職をするのではなく、PMOコンサルタントとして独立するケースを紹介します。

PMOとして十分にスキルを獲得することができたら、独立も一つの選択肢となります。

独立する場合、重要なのは営業力です。

これまで培ってきた人脈などを通して、継続的に仕事を受けられるようにする必要があります。

また、エージェントを通して仕事を仲介してもらうことも検討できます。

この場合は、自身のスキルや経験を登録し、マッチする募集があれば応募する形となります。

未経験から転職する方法

未経験から転職する方法

「IT・デジタル人材の労働市場に関する研究調査事業(P28)」では、IT・デジタル企業が中途採用を行う際に以下の能力を重要視しています。

  • 履歴書に記載されている実績
  • 各種資格や能力証明

ここでは実績と能力の証明をいかに効率的に習得していくか解説します。

基礎知識の習得

PMOはプロジェクトを専門的に取り扱うため、プロジェクトマネジメントに関する基本的な知識を習得していることが前提です。

プロジェクトの開始から終結までの一連のプロセスや、スコープ、スケジュール、コスト、品質、リスクといった管理要素についての理解が必要不可欠になります。

これらの知識の習得には初心者向けの資格を取得することが有効です。

詳しくは後述しますが、転職前に特におすすめの初心者向けの資格は以下の2つです。

  • プロジェクトマネジメント・アソシエイト認定資格
  • CAPM(Certified Associate in Project Management)

これらの資格は、プロジェクトマネジメントの基本的な知識を有していることの証明となり、対外的にマネジメントの知識を持っていることをアピールできるでしょう。

PMOを取り扱う企業への転職

プロジェクトの実績を積むためには、まず企業に転職しプロジェクトに関わることが一般の近道です。

未経験からPMOを目指す場合、どのような企業を選択するかがその後のキャリア形成に大きく影響します。

それぞれの企業タイプで得られる経験や求められるスキルが異なるため、自身のキャリアプランに合わせて慎重に検討しましょう。

PMO専門企業

PMO専門会社は、その名の通りPMO業務に特化したサービスを提供している企業です。

最大のメリットは未経験での転職あってもPMOとして育成するための研修制度やプログラムが充実している点です。

PMO業務に関するノウハウや、成功事例が社内に豊富に蓄積されており、体系的にスキルを習得しやすい環境といえるでしょう。

指導やサポートを受けながら実践的なスキルを磨くことができるため、未経験からPMO転職したい方にとってはおすすめの選択肢といえます。

ITコンサルティングファーム

ITコンサルティングファームでも、PMOとしての役割を担う機会があります。

特に大規模なシステム導入プロジェクトや企業のDX推進プロジェクトなどでは、プロジェクト全体の進捗管理や課題解決を支援するPMOの重要性が高まっているためです。

ITコンサルティングファームのPMO業務では、戦略立案や要件定義といった上流工程から関わることが多いのが特徴です。

ただし、ITコンサルティングファームの求人では、ある程度の年齢になると即戦力としての能力が求められる傾向が強く、未経験者がいきなりPMOとして採用されるハードルは他の業種に比べて高いといえます。

システムインテグレーター(SIer)

SIerは顧客の課題解決のために情報システムの企画、設計、開発、運用・保守などを請け負う企業です。

従来、SIerは自社で受注したシステム開発プロジェクトのマネジメントが中心でしたが、近年ではそのノウハウを活かして、顧客企業のプロジェクトを支援するPMOサービスを提供する企業も増えています。

SIerは自社でも多くの開発プロジェクトを抱えており、まずは開発メンバーとしてプロジェクトに参画し、徐々にマネジメントスキルを習得しながらPMOを目指すという方法が有効です。

開発現場でプロジェクトの課題やリスクを体感できるため、より実践的なPMOスキルを身につけることができるでしょう。

事業会社(一般企業)のPMO部門・部署

一般の事業会社の中にも社内の様々なプロジェクトを横断的に管理・支援するためのPMO部門や専門部署を設置している企業があります。

このような企業では、自社の事業戦略に直結する重要な新製品開発や業務改革などのプロジェクトにPMOとして関わることになります。

転職後すぐに事業会社のPMO部門へ未経験から直接配属されるケースは稀かもしれませんが、まずは社内の何らかのプロジェクトにメンバーとして従事し経験を積むことが重要です。

プロジェクトに従事しながら、プロジェクトマネジメントの資格を取得したり、積極的にマネジメント業務に関わる意欲を示したりすることで、PMOへのキャリアパスが開けていくことでしょう。

実務経験の習得

PMOとしてのキャリアを確立しさらに上位のPMOを目指すためには、継続的なプロジェクト実務経験の習得が不可欠です。

さまざまなプロジェクトを経験することで、自身の得意分野や専門性を深掘りしたり、逆に幅広い対応能力を身につけたりできます。

積極的に挑戦し実績を積み重ねていけば、PMOマネージャやPMOフリーランスといった市場価値の高いPMOへと成長できるでしょう。

【4選】PMOへの転職におすすめの資格

【4選】PMOへの転職におすすめの資格

PMOとしての専門性やスキルを客観的に証明し、転職でのキャリアアップを目指す上で資格の取得は有効な手段の一つです。

PMOへの転職におすすめの資格は次の通りです。

資格 内容
プロジェクトマネジメント・アソシエイト認定資格 プロジェクトマネジメントの基本的な知識と技術を習得していることを証明する
PMOスペシャリスト認定資格 PMO業務の基本的な知識と技術を体系的に習得し実践できる能力を証明する
CAPM プロジェクトマネジメントの基本的な知識、用語、プロセスを理解していることを証明する
PMP プロジェクトマネジメントの専門知識と実務経験を有し、指導・指揮する能力を証明する

特にPMPは高度なマネジメントスキルを国際的に証明できます。PMOであれば最終的に取得したい資格の1つといえるでしょう。

詳しくは以下のリンクをご参照ください。

記事のまとめ

記事のまとめ

この記事では、PMO人材として転職を検討している方向けに、エンジニアやコンサルタントなど様々なパターンごとにPMO人材としてのキャリアパスと転職方法をご紹介しました。

プロジェクトマネジメントスキルは転職市場においても価値が高まっているといえます。

現職がエンジニアやコンサルタントである方や、自身のキャリアの中でプロジェクトマネジメントの経験がある方は、PMO人材としてそのスキルを発揮するキャリア転職を検討してみてはいかがでしょうか。

また、この記事を監修しているクロスオーバー株式会社では、ITコンサルタントおよびPMOコンサルタントを募集しております。

プロジェクトマネジメントをはじめPMOの知識や経験をお持ちの方、またPMやPMOと同等にプロジェクト管理をしてきた技術者の方を歓迎致します。

転職をお考えの方はぜひご検討ください。