プロジェクト成功率が飛躍的に上がるPMOとは?

公開日:2021.10.08(金) 更新日:

プロジェクト成功率が飛躍的に上がるPMOとは?

大きなプロジェクトに関わる組織やIT業界で働いている方ならば、PMOという組織を耳にしたことがあるかと思います。

PMOとは、プロジェクトを円滑に推進するために、多くの企業が採用している組織であり、広く認知されつつあります。

一方で、PMOの意味・役割・必要なスキルについてきちんと理解している方は少ないのではないでしょうか?

本稿では、実際のプロジェクト実務経験も踏まえたうえで、PMOについて簡単に、わかりやすくご紹介したいとおもいます。

PMOとは?

PMOとは?

PMOとは、プロジェクトマネジメントオフィス(PMO: Project Management Office)の略で、プロジェクトマネジメントの支援する役割にあります。

また、PMOとはプロジェクトの総責任者であるプロジェクトマネージャー(PM: Project Manager)を補佐する組織であり、個々のプロジェクトマネジメントを横断的に支援する組織でもあります。

昨今、サービスやシステムが複雑化していくなかで、プロジェクトに関係するプレーヤーが過去とは比較にならないほど増えていく傾向にあり、一人のPMがプロジェクト全体をマネジメントするには限界があります。

このため、PMOはプロジェクトマネジメントの土台となる環境を整え、PMがプロジェクトの意思決定に集中できるよう支援する目的で設立されました。

具体的には、プロジェクトに必要なリソースを調整したり、プロジェクト・マネジメント方式を構築したりすることで、円滑なプロジェクト推進を支援します。

役割とスキル

役割とスキル
PMOでは、PMがプロジェクトの状態を把握するために必要な情報を整理するため、プロジェクトの進捗状況や課題、リスク、コスト、品質などを定量化していきます。

定量化するにあたっては、誰が測定しても同じ結果となるように標準化しておく必要がありますので、開発実施要領、品質管理ガイドラインやコミュニケーションルールなどの各種標準ルールを策定します。

PMOとは、このようにプロジェクトマネジメントで必要なルールを策定します。

プロジェクト毎に適用するルールを策定するノウハウや手法は、PMBOK(Project Management Body of Knowledge)というガイドブック等でもで体系化されており、世界中のプロジェクトに適用されています。

また、最近ではIT業界内ではPMOに必要なスキルや資格(PMP等)が広く認知されているので、今後もPMOは重要な役割を果たすものと考えています。

PMP資格について

PMP資格について

PMBOKを作成したPMI(Project Management Institute)は、アメリカに本部がある非営利団体です。

主にPMBOKの普及促進やPMP(Project Management Professional)という資格の認定を行っています。

システム開発会社で開発を担当された方はご存知だと思いますが、PMPとはプロジェクトマネジメントに関する国際資格です。

プロジェクトマネジメントに関する一定水準をスキルを有しているかをPMIが資格認定します。

PMP認定は1回取って終わりと言うものではなく、3年ごとにPDU(Professional Development Units)という単位を60ポイント以上取得する必要があり、これをパスしないと認定を抹消されます。

研修や育成、実務経験など内容に応じたPDUポイントが加算されるので、認定取得後もプロジェクトマネジメントに関わる必要があるという実務重視の考え方です。

公共事業の入札条件に『PMP資格を有したPMおよびPMOが在籍していること』と明記されていることがあります。

導入メリットと必要性

導入メリットと必要性

日本能率協会では、PMOを導入するメリットを以下のように記述しています。

プロジェクト現場から見たメリット

プロジェクト教訓・手法・ベストプラクティスの共有

プロジェクトは、PMOにより可視化されやすくなります。

そこで、見えやすくなった業務の手法・課題克服に関するベストプラクティスなど、それまで現場に無かった発想・解決の手法がPMOの経験・知恵によりもたらされ、現場の見える成果・無形資産として蓄積されることになります。

プロジェクト品質の適正化

プロジェクト品質は、一歩間違うと「過剰品質、低品質」に陥る可能性があります。

しかし、中立的なPMOが現場に入り、情報収集・経験を共有することによりプロジェクト品質を適正化する効果が期待できます。

プロジェクト関連リソース確保・調達の迅速化

プロジェクト関連のリソース確保・調達は、プロジェクトで実際に手を動かすメンバーではなく、PMOが支援すると、より迅速に進めることができます。

PMOは事務処理に長けているため、リソース確保・調達のプロセスはが効率化することで、スピードを求められるリソース確保にも対応できます。

プロジェクトスケジュール管理の高度化

プロジェクトスケジュール管理は、全体を俯瞰的に見て管理することが不可欠です。

PMOがいることで、プロジェクト上の課題や、日々変化する状況に応じたスケジュール管理が可能になります。

PMOがモニタリングしていることで、PMやメンバーが個別に確認・管理する時間を省力化できます。

プロジェクトスコープ管理の高度化

プロジェクトのスコープは、広がったり、あるいはスコープの一部にのみ注力するような事態が起こりがちです。

中立的・客観的なPMOがいることで、スコープ内の問題・外の問題であるかを仕分けたり、またスコープ内の抜け・もれや網羅性が確保されます。

プロジェクトコスト管理の高度化

プロジェクトにおいては、当初想定されていた予算からの見直しが必要になる場合があります。

PMOは、単なるコストモニタリングにとどまらず、早期にエスカレーションし対応案を進言します。これにより迅速な対応が可能となり、プロジェクトへの影響は極小化されます。

プロジェクトリスク管理の高度化

システム開発などIT関連プロジェクトにおける致命的な納期遅れ・予算の膨張・プロジェクトに問題が生じて停滞することなど、重大なリスクが発生することがあります。

PMOは、重大なリスクをプロジェクトにおいて定義し、かかる定義に当てはまるリスクが発生したら、誰に対してどのようなアラートを行うか、ルールを決めてモニタリングします。

プロジェクトメンバーとのコミュニケーションの高度化

PMOは中立・客観的なプロジェクト・リスク管理を行うことができます。

また、どの部署にも所属しないので、部署を超えて横断的にコミュニケーションを柔軟に行い、必要な時には部署間の調整を行うことができます。

プロジェクトステークホルダー管理の高度化

プロジェクトのステークホルダーの責任範囲や役割があいまいだと、「船頭多くして船山に上がる」事態に陥ったり、当事者意識がないなどの望ましくない結果になることがあります。

PMOがプロジェクトにおける役割分担・タスクの明確化、それが誰にアサインされているかの管理を明確にすることで、責任を持った意思決定が行われるようになります。

経営視点から見たメリット

経営視点から見たメリット

  • プロジェクトマネジメントの進行に適切な環境の整備
  • プロジェクトマネジメントの手法・知識の標準化
  • プロジェクト進捗・状況の「見える化」および確認の最適化
  • プロジェクト優先順位付けおよび経営判断の迅速化
  • プロジェクトマネジメント人財の安定的育成
  • プロジェクトへの経営者支援工数の軽減

PMOがうまく機能したプロジェクトでは、プロジェクトの状況が可視化されるようになったため、意思決定が正確で迅速になった成功事例も耳にするようになりました。

日経BP社の調査によると年々プロジェクトの成功率は上がっており、2003年は26.7%だった成功率は、2008年に31.1%、2018年には大幅に改善されて52.8%となっています。

それでも半数のプロジェクトが失敗しており、その失敗理由は15年前と比べて変わっておらず、まだまだプロジェクトマネジメントの現場では多くの問題を抱えています。

あるべき姿からいうと、ITプロジェクトは、もともと経営指標の改善・経営目標のためのプロジェクトのはずです。これらが意識されているかどうかも、成功と評価されるか、失敗と評価されるかのカギになります。

上記のメリットは、すべてプロジェクトのゴールである経営指標の改善・経営目標の達成にとって必要な要素と考えられます。

失敗・成功がシステムの完成のみにかかっているというのでしたら別ですが、本当の目標は経営目標の達成や、意思決定の迅速化など、経営にとってもっと本質的なことです。

したがって、プロジェクト内のタスクについて、どこまで何をやるか方針決定の適切性があれば、失敗プロジェクトも成功プロジェクトに転化できる可能性すらありうることには留意すべきです。

また、経営目線から見ても、失敗したプロジェクトから教訓を取りまとめ、他のプロジェクトのリスク審査としてフィードバックするなど、持続可能な開発サイクルを構築することも、PMOの役割として期待されています。

出典:プロジェクト失敗の理由、15年前から変わらず:日経ビジネス電子版

実務レベルでみたPMOとは(良し悪しの違い)

実務レベルでみたPMOとは(良し悪しの違い)

PMOについては少し認識が誤っていることがあり、多くの現場でPMO=事務局と誤解されています。

プロジェクトを構成するメンバには各々役割があり、クライアントと直接交渉する営業担当・システムを製造する開発担当・プロジェクト全体を統括するPMなど、みな具体的な目標と成果が見える担当です。

一方で、PMOはWBSの作成や進捗・品質・課題などの管理プロセス構築がありますが、プロジェクトにおける成果や貢献度が定量化されにくい担当です。

実際に現場レベルでみた時に、どんなPMOが評価されているのか、またどんなPMOが評価が低いのかを挙げてみます。

望ましいPMOの姿とは?

数週間放置されている課題を見つけては解決を促したり、進捗遅延の傾向をいち早く掴んで、PMへ報告するなどして、早期のうちにリスクを摘み取るように促します。

PMOは過去に経験してきたプロジェクトや、自身の中で体系化したリスクマネジメント基準に照らし合わせ、いまのプロジェクトがリスク許容度を超えていないか判断します。

このため、必要な資質は、まずコミュニケーションスキルです。

PMOには数多くのIT関連のプロジェクトでPMを経験してきた方も多いのですが、良いPMOの素養としては、プロジェクトメンバやプロジェクトオーナーとコミュニケーションを取るのがうまいことが挙げられます。

聞き取り力も、伝える力も十分なPMO人材は、リスクの伝達など、センシティブなコミュニケーションも苦にせず、プロジェクトをスムーズに進めることができます。

コミュニケーション能力が高く、リスクの見極めをして伝えるべき人に伝えたら、PMOの役割はその主要な部分を全うしていると考えられます。

しかし、さらに評価の高いPMOは、プロジェクト経験が豊富です。

経験が豊富であれば、プロジェクトマネジメントだけでなく、ピープルマネジメントの面でも経営のニーズにこたえることができます。

プロジェクトとは、人の集まりなので、求心力がないとばらばらになりがちです。

そんな時、ピープルマネジメントも行えるクラスのPMOとなると、意見の取捨選択・とりまとめ、また、プロジェクトに対する不満を持っているメンバーの説得など、プロジェクトにゆがみが出る前に必要な手立てを講じることができます。

圧倒的な力量を持つPMOになると、マネジメントにプラスし、業務改善や、人の育成まで短期で行うスキルがあります。

たとえば外部のコンサルティング会社からPMOとして現場に入ると、社内にややもするとノウハウ形成などはできないまま「単に仕事をやって引きあげる」ことになってしまいがちです。

しかし、力量のあるメンバーに支えられたPMOによると、最終的には客観的に効率的な工程を社内で横展開できるよう仕向けるなど、中立・かつ高度なスキルを用いて適切な行動をとることができるのです。

このノウハウを備えているPMOであれば、業務改善の目標を高い確率で達成できます。

日本能率協会グループのクロスオーバーでは、以下の資質を備えた専門家によるサービスを提供しています。

  • 高度なコミュニケーションスキル
  • 豊富なプロジェクト経験
  • マネジメントに関する知見
  • 業務改善に関するノウハウ

また、コンサルティングサービスは、日本能率協会グループの中立性を生かした内容であると同時に、高いサービス品質をクリアしているものです。

そのため、ここでご紹介した望ましいPMOの姿を実現できます。

望ましくないPMOの姿とは?

望ましくないPMOの姿とは?

一方で、淡々と事務作業のように仕事しているPMOは評判が良いとはいえません。

そもそもPMOとは膨大な管理作業の上に成り立っているところがあります。

しかし、管理はプロジェクトの本質的なことではないので、当事者意識を持つこと、そして積極的にプロジェクトに関与することの方が重要です。

例えば、プロジェクトで管理する課題管理簿は大規模案件ともなると、毎週数十件もの新規課題が積み上がります。

このような状況では、課題の内容や現場の逼迫状況を考える余裕ががなくなるため、担当へ対応を強要したり、ルールを押し付けたりする傾向にあります。

この状態が続くとPMOがどんどん孤立していくので、プロジェクト推進のために必要な情報が集まらず、問題が顕在化するまでリスクを予兆できない傾向にあります。

一方で、これまではPMOの役割は事務作業というイメージが強かったので、プロジェクトによっては業務経験の乏しい方をPMOに据えることもあり、PMOは本当にプロジェクトに必要なのか?という理由でPMOが設置されないプロジェクトも多いです。

PMOに向いている人材とは?

PMOに向いている人材とは?

PMOにはどのような人材が向いているのでしょうか?以下では、PMOに向いている人材の特徴を3つ紹介します。

PMOを外部から雇う際や、PMO人員を自社から選出する際には、そのメンバーが以下の要素を持っているかという観点も判断要素に加えてみることをおすすめします。

当事者意識がある人

PMOは事務方のイメージもあり、ともすれば事務処理を淡々とこなすだけの存在となりかねません。しかしながら、プロジェクトにおいては自ら進んで課題を解決し、プロジェクトを前進させていく意識が求められます。

PMOのポジションでありながらも、自ら率先して改善したり工夫したりすることができる人材がPMOには適しています。

当事者意識がないと、プロジェクトの現場との意識が乖離していきます。そのような状態になるとPMOの信頼感が失われ、プロジェクトの推進にも支障が生じるようになります。

交渉力がある人

PMOは自ら成果を生み出すというよりも、ほかの人が成果を生み出す支援をすることが主な仕事となります。よって、プロジェクト推進のために相手にやって欲しいことをうまく伝えられる人材が必要です。

プロジェクトにおいてITやビジネスの現場は多数の仕事を抱えています。そのような中でPMOから仕事を振ると、どうしても「そんなことをやっている暇はないのに・・・なぜ?」と思われてしまいがちです。

このようなときに、その仕事の必要性や重要性を説明して、現場に理解してもらうこともPMOの重要な役割です。交渉スキルがある、もしくは交渉をいとわない性格の持ち主であることが求められます。

やりきることができる人

PMOに限った話ではありませんが、プロジェクトにおいて「やりきる」ことは何より重要です。プロジェクトはその性質上、必ずしも正解が決まっているとは限りません。

不確定な状況の中で、自分やプロジェクトメンバーが信じた方向に向かって仕事をやりきる能力が求められます。

特にPMOにおいては、プロジェクトの進捗が思わしくないときや、大きな課題に直面した時においても、プロジェクトの本丸として誠実に問題に向き合っていくことが求められます。

プロジェクトの士気を上げるためにも、PMOにはやりきれる強さが求められるといえるでしょう。

今後求められるPMOとは

今後求められるPMOとは

このようにPMOとは、プロジェクト管理の支援だけではなく、人間的なバランス感覚も求められています。

特に新型コロナ感染にまつわるニュースや政治や経済記事を見て感じるのは、必ずしも人はデータに基づいた合理的な判断だけでは動きません。

これまで認識してきたPMOとは違い、PMOの活動範囲が広がってきたのも、プロジェクトチームという社会の最小単位で、どう人を動かし、どう協業していくのか?というPMOの本質が改めて評価されてきたのだと思います。

まとめ

まとめ
『PMOとは』をテーマに、その意味と役割について紹介しました。

PMBOKをはじめとして、プロジェクトマネジメントの手法は体系化されているものの、実際のプロジェクトにおいて正しく活用するには、豊富なマネジメント経験とコミュニケーション能力が必要となります。

PMOの役割を深く理解するほど、これからの社会に必要な役割を担っていることが分かります。

プロジェクトが高度化、複雑化する時代だからこそ、多くステークホルダーと協力関係を構築しながら、プロジェクトの成功に導くPMOの役割が再注目されています。