ITコンサルタントとSIerの違いとは?年収やキャリアパスを解説

公開日:2025.09.10(水) 更新日:

ITコンサルとSIerの違いとは?必要なスキルや年収、キャリアパスを徹底解説

ITコンサルタントは企業の課題解決を、SIerはシステム開発を担う専門企業です。

どちらも企業にとって必要な存在ですが、役割や責任範囲が異なります。

あなたに合うキャリアはどちらか、仕事内容・年収・キャリアパス・適性の違いまで徹底解説します。

ITコンサルタントとSIerの定義

ITコンサルタントとSIerの定義

ITコンサルタントとSIerはいずれもIT技術を用いて企業の成長を支援する存在ですが、専門領域が大きく異なります。

ITコンサルタントとSIerの定義は以下の通りです。

ITコンサルタントとは?

ITコンサルタントとはIT技術を活用して企業の経営・業務の課題を解決する専門家です。

経営の視点から企業の問題やリスクを洗い出し、IT技術を活用して企業戦略を達成します。

主な役割は以下の通りです。

  • 経営層と対話しビジネス上の課題や目標といった根本的な経営問題を確認する
  • 課題解決のためのIT戦略立案や、システム化の企画・提案を行う
  • プロジェクトが始動した後は、開発チームや関係者をまとめ、プロジェクト全体が円滑に進むよう推進する

最終的なゴールはITの力で企業を改革し、成長を達成させることにあります。

ITコンサルタントはITをツールとして、経営の視点から企業の発展を手助けする存在と言えるでしょう。

より詳しい仕事内容は以下のリンクをご覧ください。

SIer(システムインテグレーター)とは?

SIerとはIT開発のプロフェッショナルとして、顧客のための情報システムを構築する企業や職種を指します。

企業のシステム化企画により立案されたシステム導入や開発を実現する役割です。

作成された企画を元に、どのような機能が必要かを具体的に定め、システムの設計、機能の実装、テスト、そして最終的なリリースまでを一貫して請け負います。

また、完成したシステムの導入支援や、安定して稼働させるための運用・保守、利用方法の支援なども行い、ITシステムに関する幅広い実務を担います。

SIerとはITの専門家であり、ITの観点から企業の業務改革を成功させる存在といえるでしょう。

ITコンサルタントとSIerの比較

ITコンサルタントとSIerの比較

ITコンサルタントとSIerは協力し合う関係にありながら、その仕事内容や求められるスキル、そしてキャリアパスが明確に異なります。

両者の違いを3つの観点で解説します。

仕事内容と役割の違い

ITコンサルタントとSIerの最も大きな違いは、プロジェクトにおいて関わる工程と、その目的です。

一般的にITコンサルタントは「上流工程」を、SIerはそれ以降の「システム構築」を主に担当します。

ITコンサルタントは顧客の経営課題に焦点を当てIT戦略を練るなど、企業全体の経営に関わる視点が必要です。

SIerはその戦略に沿って専門的な技術力でシステムを構築し企業の業務改善を具体的に実現します。

この役割の違いからITコンサルタントはより「経営向け」、SIerは「テクノロジー向け」の職種であると言えるでしょう。

必要なスキルの違い

ITコンサルタントとSIerには、コミュニケーション能力や課題の管理能力など共通して求められるスキルが存在します。

しかし、それぞれの専門領域で成果を出すためには異なるスキルが重視されます。

ITコンサルタントには経営層と対話するための経営・財務知識や、特定の業界・業務内容の知識が不可欠です。

また、相手を説得するための提案書を作成する高度なドキュメンテーション能力も求められます。

一方、SIerにはシステムを構築するための技術的専門性や、特定のIT製品知識、そして完成したシステムの品質管理能力が必要です。

ITコンサルタントにはビジネス上の課題を解決するスキル、SIerには技術的な課題を解決するスキル、といった異なるスキルが求められるのです。

年収とキャリアパスの違い

ITコンサルタントとSIerでは年収の水準やその後のキャリアパスにも違いが見られます。

厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)によると、ITコンサルタントとシステムエンジニアの年収レンジは以下の通りです。

職種 年収レンジ
ITコンサルタント 600万~1,100万
システムエンジニア 420万~950万

参考:厚生労働省 職業情報協提供サイト job tag
ITコンサルタントの年収
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/362

システムエンジニアの年収
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/312

ITコンサルタントの年収が高い理由は、企業の業績に直結する経営課題を扱う案件が多く責任が大きいためです。

SIerの仕事も企業の業績に貢献しますが、ITコンサルタントはより経営の根幹に近い部分で価値を提供するため、報酬が高く設定される傾向にあります。

そのためSIerからITコンサルタントへの転職は、自身の市場価値を高める選択肢の一つといえます。

転職は単なる年収アップだけでなく、より大きな裁量と責任を持つ立場へのキャリアアップといえるでしょう。

より詳しい年収や報酬体系については、こちらの記事をご覧ください。

ITコンサルタントがやめとけと言われる理由

ITコンサルタントがやめとけと言われる理由

ITコンサルタントは高い専門性と年収から魅力的な職種と見なされる一方、「やめとけ」という厳しい意見があるのも事実です。

「やめとけ」といわれる主な理由は以下の通りになります。

  • 企業の経営課題という重要なテーマを扱うため、責任が重く激務になりやすい
  • 常に進化し続けるIT技術と、顧客の業界動向の両方を学び続ける必要があり、絶え間ない自己研鑽が求められる
  • 経営層から現場担当者まで立場の異なる多くの関係者の意見を調整する役割を担うため、精神的な負担が大きくなる

ITコンサルタントは「やめとけ」といわれながらも、高い年収・市場価値、経営への関与というさまざまなメリットにより人気の高い職種です。

詳しくは以下の記事で詳しく解説しています。

ITコンサルタントやSIerに向いている人の適性

ITコンサルタントやSIerに向いている人の適性

ITコンサルタントとSIer、どちらのキャリアを選ぶべきか悩んだときは、それぞれの職種に向いている人の特徴と、自身の志向性を照らし合わせてみることが有効です。

ITコンサルタントに向いている人

ITコンサルに向いている人の適正は以下の通りです。

適性 解説
論理的思考が得意 ITコンサルタントは正確な解答のない課題に対して最適解を導き出す必要があり、物事を筋道立てて考える論理的思考が得意な人が向く
プレッシャーを楽しめる 経営層と対峙し厳しい意見も提言する場合もあり、「困難」ではなく「挑戦」と捉えて楽しめる人が向く
学び続けられる 常に新しい技術や業務・業界の知識などを学び続ける必要があり、旺盛な知的好奇心を持つ人が向く

これらの適性を最初から持っている必要はなく、実務を通して習得していけばよいでしょう。

SIerに向いている人

SIerに向いている人の適正は以下の通りです。

適性 解説
モノづくりが好き 作成したプログラムが実際に動いた時に達成感や喜びを感じる人が向く
粘り強さがある プログラミングやテスト作業を最後まで諦めずに、粘り強く課題に取り組める人が向く
協調性がある チームメンバーと協力しながら一つの目標に向かって進める人が向く

SIerは課題を乗り越えシステムが無事に稼働した際には、大きなやりがいを得ることができる職種といえるでしょう。

ITコンサルタントのSIer化で、SIer経験の価値が高まる理由

ITコンサルタントのSIer化で、SIer経験の価値が高まる理由

かつてIT業界では戦略を立てるのがITコンサルタント、その戦略に基づき開発を行うのがSIerという明確な役割分担が存在しました。

ITコンサルタントが実現困難な構想を立案し、SIerが多大な労苦を強いられる状況が実在したのです。

しかし近年、この構図は大きく変化しています。

顧客がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する上で、実現可能な戦略を求めるようになったためです。

このニーズに応えるためITコンサルティングファームが開発までを一気通貫で担う「元請け」となり、プロジェクト全体を管理するケースが増えています。

ITコンサルタントにもSIerのように現場の業務を深く理解する「業務理解力」が不可欠になったといえるでしょう。

まとめ

まとめ

ITコンサルタントは企業の経営課題を解決する「戦略のパートナー」、SIerはシステムを構築する「開発のパートナー」であり、それぞれに異なる役割・スキルがあります。

どちらのキャリアがあなたに合っているかは、あなたが仕事において「何を成し遂げたいか」によります。

上流の立場で企業の成長を支援するキャリアに魅力を感じるのであれば、ITコンサルタントへの道は有望な選択肢となるでしょう。